ある人が、新しく入社した人の事をこう言った。
「あいつはダメだ」
理由を聞くと、先日ランチを奢ったが、お礼の一言もないので「社会人の常識が無い」とのこと。
それだと、「社会人の常識が無い」という評価はある程度の信憑性はあるが、「ダメ」という烙印はかわいそうな気がする。その話から、こんなことを思い出した。
私が35歳のころ、生前の叔父と角打ちで時々飲んでいた。
あるとき、私の従弟(いとこ)の事を悪く言ったことがある。
「あいつに今までいろんなことをしてあげたのに、お礼状の1つも貰ったことが無い」
私はそのとき、父の言葉を思い出していた。
「人はその見返りを求める。人に何かをして、その見返りが無いと怒る。これは人間の残念な部分だ。そう思わないように、人に何かをするときは一方通行で、勝手な善意だと思う事が良い。」
そう、叔父は父の悪い例に出てきたままである。
私もそうならないようにしたいものだが、まだまだ人間が出来てない。
私は最近、ある人にとても嫌悪感を覚えていた。
なぜそんなに自分本位なのか?自分勝手なことを言っていることがなぜわからないのか?相手の気持ちや立場を考えてみれば、そんな風に考えられるはずがないのに…
私は考えれば考えるほど許せなくなり、怒りを覚える。
しかし、ある言葉を口に出した途端、まるで嘘のように気持ちが軽くなった。
「しゃあない(仕方ない)」
その人の事を、しゃあないと割り切れば、何のことは無くなったのである。
誰も傷つけることなく、解決した。